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日本初!シロワニの赤ちゃん展示開始

2021年6月17日、当館が飼育するサメ「シロワニ」の赤ちゃんが誕生いたしました。
日本初、世界でも5園館目の快挙達成であり、バックヤードにて日々成長を見守ってまいりました。国内での事例がなく、試行錯誤しながら飼育を行ってまいりましたが、産まれてから約4か月が経過し、赤ちゃんの状態が安定していると判断したため、2021年10月12日(火)・12時より晴れて常設水槽での一般公開を開始することとなりました。

シロワニ赤ちゃんプロフィール(2021年9月30日現在)

・No.9(メス)
・2021年6月17日生まれ
・全長:108.8cm(出生時:92.2cm)
・体重:7.6㎏(出生時:4.3㎏)

出生後の経緯

6月18日(金)
落ち着いているが、水槽の照明を点灯すると遊泳速度が速くなる。

6月21日(月)
白色胎便少量排出。出生後初排便。差し棒で給餌を開始。興味を示すが摂餌せず。

6月22日(火)
水中プロポーション撮影。出生後初。最初、ダイバーに驚き遊泳速度が速くなるが、すぐに落ち着く。以降、約1週間に1回のペースで、水中プロポーション撮影を行う。

6月28日(月)
差し棒の餌(アジ短冊40g)一切れ摂餌。出生後初摂餌。

7月6日(火)
底に落ちた餌を拾う訓練を開始。

7月16日(金)
取り上げ計測。TL:92.0cm、BW:5.0㎏
以降、1カ月おきに取り上げ計測を行う。

8月7日(土)
20cm程のアジを1/2に切ったもの(大きめの餌)に切り替える。問題なく摂餌する。
以降、この餌の給餌を継続する。摂餌量は日によって増減するが、比較的安定して現在まで摂餌している。プロポーションは良好で、全長、体重は現在までほぼ直線的に増加している。

シロワニの赤ちゃん展示について

展示開始日時
2021年10月12日(火)・12時~
展示場所
3階「世界の海ゾーン1」内・「サメの海2」水槽
※バックヤード水槽から「サメの海2」水槽へ赤ちゃんの移し替えを行います。

「シロワニ繁殖」と「サメの飼育展示種類数日本一」へのこだわりについて

1.「シロワニとは?」

自然下のシロワニは地域によっては絶滅が心配されるほど生息数が減っています。日本でも生息地域が限定的で特殊な繁殖生態により急激な増加は見込めないため、環境省の海洋生物レッドリストでは2017年に絶滅危惧種としてあげられています。

その一方で、世界的にみると多くの水族館でシロワニは飼育展示されており、堂々とした風格が漂う姿はサメの魅力を伝えるうえで欠かせない存在になっています。

2.「繁殖活動の開始と苦悩」

当館で飼育を始めた当初はなぜ水槽内での繁殖が難しいのかも分からず、必ず繁殖させてやると意気込んでいました。

ところがいざ飼育している個体が成熟し、発情行動が見られ、交尾が確認できても妊娠にはいたらず頭を悩ませる日々が続きました。

「南アフリカ産だから日本の環境には合わないのか?」「雄と雌の発情期がずれているのではないか?」などの憶測を立て、断片的に集めた情報をパズルのピースのように組み合わせ、飼育環境を変化させる実験を繰り返してきました。

この間にもシロワニの老化は避けられず、今年が最後のチャンスかもしれないと不安がいつも頭の中によぎっていました。

3.「繁殖成功への期待と不安」

「今年こそは」という意気込みと「今年もダメかも」という諦めが入り混じり始めた2月、現在シロワニを担当している飼育員から「胎動らしき動きがあった」と報告を聞いたときは、驚きと同時に、「何かの間違いでは」と疑ってしまいました。

自分の目で確認するまでは納得ができず、水槽の前に張り付き観察したところ間もなく、かすかに親ザメの腹が動く様子を見ることができました。この瞬間の興奮はいまでも忘れられません。

文献によると、交尾後12ヶ月で出産とされていたため、この後24時間通しての観察を開始しました。飼育員が交代で観察を行ったのですが、予定の日を過ぎても生まれる気配はなく、さすがにみんな疲弊が隠せなくなりました。

やがて1か月、2ヶ月と過ぎてゆき、朝は「おはよう」の代わりに「生まれた?」が挨拶になりました。時間は過ぎてゆきましたが一向に生まれる気配はなく、時折現れる胎動に励まされるように疲れた体に鞭を打って観察を続けました。

飼育下での出産例が少ないため、シロワニの出産に関する文献はあまりありません。その文献にも出産までの様子や出産の前兆など詳細に書かれたものはありませんでした。いつ生まれるのか、生まれる前には何が起こるのか不安なまま観察を続けた結果、どの時間に胎動が起こりやすいか、親ザメがどのような行動をするのか今までにないデータを集めることができました。

4.「日本初!世界で5園館目の繁殖成功」

交尾を確認してから15か月、観察を始めて4か月になろうかという6月17日早朝、突然変化が起きました。親ザメの排泄孔から白濁液が漏れ始めました。

白濁液の量は相当なもので、パンパンに張った親ザメの腹がゆっくり萎んでいきました。「いよいよ出産かな?まだ時間はかかるかな?」程度の気持ちで観察の補助に入り、ビデオ撮影をしていると一緒に観察していた飼育員がいきなり「しっぽが出た!」と叫びました。

これを聞いて、頭の中が真っ白になってしまいました。一番心配していたのがこの状況だったのです。尾から出てくるということは、逆子ということです。逆子では、ヒレなどが引っかかってしまい、うまく出産されない可能性が高くなります。

ここまできて失敗かと冷や冷やしながらも観察をしていると、少しずつ胎内に戻っていき、今度は頭の先端が見えました。赤ちゃんは胎内で反転し体を折り曲げながら、顔をのぞかせたのです。親ザメが体を大きくくねらせた次の瞬間、子ザメはスルリと滑り出すように出産され、のたうち回るように泳ぎだしました。

記憶にはないのですが、ビデオには「出る!出る!出る!出た!」と叫び声が記録されていました。シロワニの誕生の瞬間を収めたこの動画は今までにない非常に貴重な記録になりました。

早く掬い上げたいと水槽の上まで駆け上がると、すでに待機していた取り上げ班が活動を始めていました。

子ザメはフラフラと水槽の中を泳ぎ続けていたため、重い網を引き摺りながら追いかけ、掬うタイミングを伺っていると運よく水面まで浮き上がってきました。すかさず、網を入れてうまく掬うことに成功し、用意していた一時避難用の水槽に運び込み、予備水槽までの運搬の準備が整う間、「よく生まれてきたな」と撫でまわしてしまいました。

予備水槽に運んだ後も、子ザメは私たちがびっくりするくらい落ち着いていて、心配していた壁への衝突もなく、状態の良さがうかがえました。ここまで来てやっと私も落ち着きましたが、子ザメの可愛さに水槽の縁からしばらく離れることができませんでした。

5.「今後の飼育に向けて」

ここに至るまで20年の月日が経ってしまいましたが、やっとスタートに立てた気分です。

生まれたばかりのシロワニの子ザメの飼育は初めてですが、これまで他のサメの繁殖させた経験を活かし、展示に向けて餌付けなどの馴致を行い、他のサメと同居させてもこの子ザメが困らないように日々、計画的に訓練を重ねています。

6.「『サメの飼育展示種類数日本一』の水族館として」

水族館ではサメはとても人気者です。「怖い」「かっこいい」感じ方は人それぞれですが、不思議な魅力を持っています。また、サメは生態系ピラミッドの中では頂点にあたる生物です。つまり食物連鎖を考えると多くの生物に支えられて生きている存在です。

海の生態系や自然環境などに目を向けるきっかけ作りにも最適な生き物です。しかし、その生態は謎だらけ。いまだに毎年、新種も見つかっています。飼育員にとっては、追っても追っても次々に疑問を持たせてくれる、面白い生物です。

今回、シロワニの繁殖に成功しても、妊娠期間や出産までの行動が過去の知見と違うのはなぜだろう、それぞれの行動にどのような意味があったのだろうと新しい疑問を持たせてくれます。

今後も謎だらけのサメの生態を追い続け、研究を重ねることにより、皆様に新たなサメの魅力を伝えてまいります。

担当飼育員からのメッセージ

無事生まれてくれたのでホッとしました。何よりも生まれた瞬間は興奮しすぎて、記憶がありません。

水槽前で生まれる瞬間を見ることができたのですが、確認すると同時に取り上げのため体が勝手にバックヤードに向かって走っていました。今回の親魚も子供の時から娘のように育てている個体ですので、その子供はかわいくて仕方ありません。おじいさんが孫を見る目はこんなものかなと思っています。

「シロワニ」について

和名
シロワニ
(ネズミザメ目 オオワニザメ科)
英名
Sandtiger Shark
学名
Carcharias taurus
生息地域
大西洋の温帯~熱帯域、地中海、インド洋~西部太平洋
特徴
細長くて鋭い歯をした凶暴そうな顔つきですが、おとなしい性格のサメです。胃の中に空気を飲み込んで浮力を調節します。水槽でも空気を吸うため水面に上がってきます。当館では1999年6月から飼育を始めました。
当館で飼育するシロワニ
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